01章で、論文は「自分の信念に対して説明責任を引き受けるための媒体」だと述べました。この章は、その責任の中身を4つに分けて書きます。誰が責任を負うか(Authorship)、データに対して正直か(誠実さ)、他者が確かめられるか(再現性)、他者の仕事をどう扱うか(帰属と引用)。
Thesis は内部責任、Journal は外部検証です。学位論文を書いただけでは、探究はまだ研究室の内側にあります。探究は公共空間(Lab → Scientific Community)で完結し、公共空間に出た主張には、これから述べる責任が伴います。
著者になるとは、名前が載ることではなく、その論文の主張に対して問われたら答える立場に立つことです。
データ提供のみ、指導を受けたのみ、は著者ではなく謝辞です。逆に、著者に名を連ねた以上、「そこは自分の担当ではない」は通りません。著者順は貢献度に基づき、執筆前に仮決め、完成前に再評価、投稿前に全員の了承で確定します。手続きの詳細は Lab Forum Lectures「Writing Papers — Overview」に。
改ざん・捏造・盗用は研究倫理の三大違反であり、議論の余地はありません。けれど責任の問題は、もっと手前から始まります。
誠実さは倫理の話であると同時に、論文の強さの話です。限界を正直に書いた論文の方が、査読に耐えます。
公共空間に出た主張は、他者が問い返せなければ意味がありません。問い返せるとは、同じ手順を踏めることです。
再現性は他者のためであると同時に、未来の自分のためです。半年後の自分は他者です。
他者のデータ・アイデア・図を使うときは必ず出典を明記します。引用は義務であると同時に、自分の位置づけの証明でもあります(03章 Step 1)。図表は著作権フリーのものを使うか、出典を明記する。生成 AI で作った文章や図も、使い方と範囲を明示する対象です。
責任は重荷ではなく、信念を持つことの裏面です。「私はこう考える」と言い、問われたら答える。研究者になるとは、この立場に立つことです。学部生でも、卒論に名前を書いた瞬間からこの立場は始まります。