第Ⅲ部は、ここまでの原理と設計を、鈴木研ではどう実装しているかの話です。最初に、私たちが何を研究しているかを述べます。
どれも直接は見えません。見えない構造を読み解き、行き先を設計することが私たちの仕事です。
地熱は、見えない構造(技術的な不確実性)と見えない想い(社会的なフレーム)の両方を含むフィールドです。地下をどれだけ正しく推定できても、地域の納得がなければ開発は進みません。逆に、対話だけでは地下は動きません。
だから私たちは、地下の探究と社会の探究を同じ問いの形で扱います。観測から原因を推定し(What / Why)、目的から手段を設計する(How)。02章の軸で言えば、理学的な理解を「わからなさを含んだまま」工学的な設計に渡す二段構えです。この二段は、地下でも社会でも、そして自分自身のキャリアでも同じです。
地熱は目的ではなく、探究のための最良のフィールドです。ここで得た方法論は、他の自然・社会システムにも展開できます。
02章で、理学的な問いは受動的探究(理解)で着地し、工学的な問いはその上に能動的探究(設計)を重ねると述べました。鈴木研は後者に重きを置きます。現象を理解すること自体より、その理解が設計にどう使えるかを問います。だから、理解の細部で「雑に済ませるところは雑」と感じることがあるはずです。設計に効かない精度は追わない、という判断をしているからです。
これは個人差が出るところで、指導教員に合わせる必要はありません。理解そのものに価値を置く人も研究室にいてよい。ただし、自分がどちらに重きを置いているかは言えること。そして、共同研究者や指導教員との相性は、この立場の近さで決まることが多い、と知っておいてください。
02章は、目標と前提が与えられた中で最適な手段を探す「解決のサイクル」を扱いました。そこで外に置いた「探索のサイクル」——目標そのものや前提そのもの、問題を捉えるフレームを疑い、作り直す探究——が、Team Society の研究対象です。
Schön が指摘したように、何が問題で何がその解決かは、問題を捉えるフレームに依存します。発電事業者にとって合理的な開発計画が、温泉事業者には受け入れられないのは、論理が間違っているからではなく、フレームが違うからです。鈴木らは、Peirce の論理学・倫理学・美学の区別を使って、フレームとは倫理学的次元(何を事実とし、何を願うか)と美学的次元(何をどう感じるか)の探究対象であり、それを意識的に疑うことがリフレーミングだと整理しました(鈴木・山口・柳澤 2025)。
つまり、この研究室では、地下の探究(受動)、開発の設計(能動)、そしてフレームの探究(リフレーミング)を、すべて同じ探究の形式で扱おうとしています。Team Rock が前二つを、Team Society が三つ目を主に担い、両者は「見えない構造を限られた観測から推定し、わからなさを引き受けたまま次に渡す」という問いの形を共有します。
だからチームを跨いで Paper Card が通じ、Lab Forum で互いの研究に口が出せます。
具体的なテーマと進行中のプロジェクトは研究室 HP をご覧ください。→ Research — DeSFE Lab
研究を進めるために知っておくべき学問と授業、いつまでに何を、は付録 07-A 学びの地図に。Paper Card のどこで止まっているかから逆引きできます。