Framing-A で問いは1文になりました。けれど問いに答えるだけでは論文になりません。論文は、あなたが「これを示した」と言い、他者がそれを問い返せる形にしたものです。Framing-B はその「これを示した」を、結果が出る前に設計する工程です。
ここでも結果は書きません。「結果がこう出たら、こう主張する」という条件付きの設計です。
Paper Card の Framing-B は、3つの Step からできています。
順番が大事です。貢献が確定してから物語を書き、物語が書けてから構造を描く。逆に進むと、物語に合わせて貢献を膨らませることになります。
ルールは4つ。
"We show that…" で始める理由。 "We propose a new method" は貢献ではありません。提案しただけでは、何が変わったのかがわかりません。貢献は「We show that ○○である」の形で、示す内容を先に言い切ります。手法はその内容を示す手段であって、貢献そのものではありません。
なぜ3つか。 1つでは論文が薄く、4つ以上では読者が覚えられません。3つを超えるなら、主張が絞れていないか、論文が2本分あるかのどちらかです。多くの論文が3つの貢献を持つのは慣習ではなく、読者の記憶と論理構造の両方に理由があります(Notion「Why Do Many Papers Have Three Contributions?」)。
強い貢献と弱い貢献。
✕"We propose a machine-learning framework for reservoir modeling." — 手法の説明。何を示したかがない
✕"We show that our method achieves significant improvement." — 曖昧語。何がどれだけ、がない
○"We show that permeability distributions can be recovered from tracer responses with less than 20% error in branching multi-path systems." — 何を、どの条件で、どこまで、が入っている
Contribution Check:
Key Contributions を書くとき、02章の区別がそのまま効きます。
入口の戦略(02章 Ⅰ)
| 入口 | 主張の形 | 証拠の形 |
|---|---|---|
| 仮説先行(モデル駆動) | We show that the proposed law holds for … / breaks down at … | 予測 vs 観測の一致。適用範囲の境界 |
| データ先行(データ駆動) | We show that the data reveal … / that the index predicts … | データの分布と偏りのなさ。見つけた規則の再現性 |
探究の種類(02章 Ⅱ)
| 種類 | 主張の届く先 |
|---|---|
| 受動的探究(理解) | 主張は「理解」で終わってよい |
| 能動的探究(設計) | 主張は「設計に使える」まで届く必要がある。証拠は設計に使ったときの効果 |
コミットメント(02章 Ⅱ)
| 主張がコミットするもの | "We show that…" の中身 |
|---|---|
| 記述 | …が観測された |
| 説明 | …が…を支配する(代替説明を潰した上で) |
| 予測 | …は未知の条件でも…を予測する |
| 制御 | …を操作すると…が変わる |
入口を跨いだ主張——データ先行で見つけた指標を、仮説先行で一般化したかのように書く——は査読で最も突かれます。修士でデータ先行、博士で仮説先行に移った人は、問い(どんな規則があるか → この法則はどこまで成り立つか)、証拠(データの偏りのなさ → 予測と観測の一致)、主張の形(reveal → holds / breaks down)の3つを切り替えてください。切り替えないと、データ先行の証拠で仮説先行の主張をすることになり、論理が閉じません。
同様に、コミットメントを超えた主張——相関しか示せていないのに「支配する」と書く——も突かれます。自分の証拠がどの種類かを見て、"We show that…" の動詞を選んでください。
貢献が確定したら、論文の Introduction の骨格を7つの文で書きます。これは要旨の下書きであり、Introduction の設計図です。
Framing-A の出力がそのまま 2・3・4・6 に入り、Step 1 の Contribution 1 が 5 に入ります。つまり Narrative Skeleton は、Framing-A と Framing-B を1本の物語に縫い合わせる工程です。ここで文がつながらないなら、Framing-A と Contributions のどこかがずれています。
"Here we show" は Contribution 1 と一致させる。 論文で最も読まれる1文は、Introduction 末尾の "Here we show that…" です。これが Contribution 1 と違うことを言っていると、読者は論文の主張がどれかわからなくなります。
貢献が2つ以上あるなら、それらは互いにどう依存しているかを図にします。これはワークフロー図ではありません。主張の構造図です。
書き方:箱と矢印で依存関係を描く。手書きで構いません。
直列構造:
[ C1:基礎的主張 ]
↓
[ C2:C1 に依存する拡張 ]
↓
[ C3:最終的含意 ]
並列構造:
[ C1 ] [ C2 ]
\ /
↓ ↓
[ C3:統合的主張 ]
崩壊テスト:どの箱を取り除くと論文が崩れるか。崩れる箱が根幹の主張で、それが Contribution 1 であるべきです。取り除いても崩れない箱は、貢献ではなく補足かもしれません。
証明可能性チェック:各箱は図で示せるか。示せない箱は、貢献ではなく願望です。
Figure 0 は論文には載りません。けれど、Figures-A(次の段階)で「どの図が必要か」を決めるときの設計図になります。1つの箱が、おおむね1枚の主図に対応します。
Framing-B が終わると、「この図が出れば主張が立つ」と言える状態になっているはずです。Figure 0 の各箱について、それを支える図の形が言えるかを確認してください。
言えないなら、主張がまだ設計されていません。実験やデータ取得は、この図を作るために行います。主図は1図=1主張、Contributions が3つなら主図もおおむね3枚。
ただし、論文の図は主図だけではありません。対象や装置を示す図、手法の妥当性を示す図は主張を運びませんが、読者が主張を評価するために要ります。Figure 0 の箱に対応するのは主図だけで、それ以外の図の役割と設計は Lab Forum Lectures「Writing Papers — Figures」で扱います。
Framing-B は Paper Card の3段目です。Key Contributions(Contribution Check 付き)、Narrative Skeleton の7文、Figure 0 を埋め、Team Meeting で「Next Judge」を受けると、Figures-A に進めます。Framing-A と Framing-B が埋まった時点で、論文の主張構造は固定されています。Structure before data — No Card → No Paper. → Lab Tools「Paper Card」