このカードは、研究テーマを「論文として設計し、前に進める」ための作業ページである。 最初から全部書く必要はない。順番:Idea → Framing → Figures → Draft
研究が止まる最大の原因は、データ不足でも能力不足でもありません。問いの不在です(Lab OS 03「問いの設計」)。データを取ってから意味を考える「データ先行」の研究は、必ず迷走します。
Paper Card は、この順番を強制的に逆転させる装置です。完成した論文が持つべき構造——問い・先行研究との差分・貢献・図・物語——を、データを取る前に設計する。つまり Paper Card は進捗報告書ではなく、研究の設計図です。
なぜ消さないのか。研究は信念の更新で進むからです。更新の履歴を消すと「なぜ今の主張に至ったのか」が分からなくなり、同じ検討を繰り返すことになる。取り消し線は迷いの痕跡ではなく、探究サイクルが回った証拠です。
| ステージ | ここで固定するもの | 関門 |
|---|---|---|
| 🌱 Idea | 「論文として設計できそうか」の判断材料 | Team Meeting |
| 🧭 Framing | 位置づいた問い・貢献・物語の骨格 | Team Meeting |
| 🖼 Figures | 主張を支える最小の図セット | Team Meeting |
| ✍️ Draft | 査読に耐える原稿 | Team Meeting |
各ステージの終わりには ➡️ Next Judge があります。進む・戻る・止めるを Team Meeting で決め、壁打ち(Sparring)もこの Next Judge の中で行います。判断と磨きを同じ場でまとめて行うのが Team Meeting の役割で、その判断と理由は Decision Log に残します(5階層構造)。
Idea-0|Spark:思いついた違和感・疑問を、判断せずに貯める場所。1〜2文の箇条書きでよく、共有も不要な自分メモです。ここでは「論文になるか」を考えてはいけません。先行研究を無理に探すのも禁止——芽を審査にかけると、芽が出なくなるからです。
Idea-A|Check & Commit:貯めた Spark のうち1つを、他人が「論文として設計できそう」と判断できる状態にします。書くのは5つ:
注意:結果・数値は不要。「新規性の証明」もしない。完璧な文献レビューも、図や実験の構想もまだ早い。ここで問うのは「設計に値するテーマか」だけです。
Framing はアイデア出しの場ではありません。分野の中で位置づいた問い(Core Question)を1文で作る工程です。下流のすべて——図・原稿・投稿先——がこの1文から決まります。
Framing-A|Positioned Question Design
まず分野を眺めます(主要レビュー論文+直近の代表論文5本以上・自分用メモでよい)。分野でよく使われる問いの型(Question Archetypes)を掴むことが、迷走の予防になります。そのうえで、Team Meeting で説明できる形に5点を整理します:
Framing-B|Key Contributions and Story Design
問いが固定されたら、論文が何を主張するかを設計します。
Framing が固まったら、Team Meeting の Next Judge で壁打ちと判断を行います。問い・位置づけ・表現を壊して磨きながら、進む・戻る・止めるを決めます。
原則は 1図=1主張。図は結果の説明ではなく、主張そのものです。だからデータより先に「空図」を設計します。
凍結した図セットが、そのまま論文の骨格になります。ここでも Team Meeting の Next Judge で壁打ちを挟みます。
→ 詳しくは Lab Forum Lectures「Writing Papers — Figures」で。
執筆順は固定です:
Methods → Results → Discussion → Introduction → Conclusion → Abstract → Polish
なぜこの順番か。先に事実(Methods / Results)を固定し、次にその意味(Discussion)を与え、最後にそれを分野の文脈(Introduction)に配置する——イントロから書くと、まだ存在しない主張を予告することになるからです。
Results は「何が起きたか」。Discussion は「それが何を意味するか」。
Introduction が「不足の宣言」なら、Discussion は「更新の宣言」。 鏡になっていなければ、構造は崩れている。
| ステップ | やること・原則 |
|---|---|
| A|Methods | 他人が再現できる形で、事実の土台を書く(設計・データ・手順・評価) |
| B|Results | 解釈しない。図と1対1で事実だけを書く。評価語・"suggests" は禁止 |
| C|Discussion | 5部構成:問いへの直接回答 → Gapの回収 → 前提の更新 → 分野への意味 → Limitations。攻撃ではなく「更新」として書く |
| D|Introduction | Discussion 確定後に逆算で書く:Broad Context → Field Context → Gap(1文)→ Core Question → "Here we show ..." |
| E|Conclusion | 3段落以内に圧縮:主張の再提示・分野レベルの意味・次の問い。新情報は足さない |
| F|Abstract | 6〜7文・順番固定(Background / Gap / Question / Method / Results×2 / Implication)・200〜250語 |
| G|Complete | 査読耐性の構造監査:Intro と Discussion は鏡か、図は主張を支えるか、想定 Reviewer コメントは書き出したか |
| H|全文 | 荒くてよいから書き切る。完璧・英語の細部・Reviewer 対応をこの段階で気にしない |
| I|磨き | 削れる部分を削り、Appendix 行きを決める。いつまでも磨き続けない——完璧な英語よりロジックの明晰さ |
→ 詳しくは Lab Forum Lectures「Writing Papers — Draft」で。
各関門での判断(Decision)と理由(Reason)を、日付つきでカードの末尾に記録します。「なぜこのテーマを続けたのか」「なぜあの方向を捨てたのか」——半年後の自分と、いつかこのテーマを引き継ぐ誰かのための記録です。取り消し線ルールと同じく、判断の履歴は探究の一部として残します。
研究室メンバー:全員の Paper Card は Paper Progress Board(Notion データベース)に集まっています。新しいカードはボード上のテンプレートから作成し、毎週更新してください(Lab OS 10:Paper Card は週次の必須習慣)。Team Meeting の前に最新化しておくこと。
📋 Paper Progress Board を開く(メンバー限定)※ ボードの閲覧・編集は研究室メンバーのみ。ログインが必要です。
研究室外の方へ:テンプレートの構造はこのページに書いたとおりです。Notion でも Word でも紙でも再現できます。大事なのはツールではなく、「構造が先、データは後」という順番のほうです。