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LAB OS — PART Ⅱ 研究の設計 | APPENDIX 03-A

問いの型|Question Archetypes

Question Archetypes — 7つの型と、型ごとに決めること
研究分野が違っても、問いの構造はある程度共通しています。自分の研究がどの「型」に属するかを確認し、その型が要求する要素が決まっているかを見てください。

「決めること」とは何か

各型の「問いを成立させるために決めること」は、論文に書く項目ではありません。問いを1文にする前に決めておく要素です。推定型で「何を推定するか」「何から推定するか」が決まっていなければ、問いは書けません。

決まると、二つのことが自動的に決まります。一つは Core Question の中身(03章 Step 2-3)。もう一つは必要なデータ——何を、どの条件で観測すべきか(03章「問いが決まると、必要なデータが決まる」)。要素が決まらないまま実験に入ると、取ったデータが問いに答えられないことが後でわかります。

A|推定型|Inference / Estimation

"Can we infer X from Y?"

観測データから、直接見えない構造やパラメータを推定する問い。

問いを成立させるために決めること:X(推定したいもの)は何か/Y(観測できるもの)は何か/識別性はあるか/不確実性はどう扱うか

B|機構型|Mechanism / Causality

"What controls X?"

ある現象を支配する因果構造を明らかにする問い。

問いを成立させるために決めること:「支配する」をどう定義するか/因果と相関をどう区別するか/代替説明は何か

C|妥当性型|Validity / Boundary

"Under what conditions is the model/assumption valid?"

モデルや仮定の適用範囲を問う。

問いを成立させるために決めること:何が仮定か/どの条件で破綻するか/何と比較して妥当と言うのか

D|不確実型|Uncertainty / Sensitivity

"How sensitive is the prediction to uncertainty?"

予測や判断が不確実性にどの程度影響されるかを問う。

問いを成立させるために決めること:どの不確実性を扱うか(構造/パラメータ/データ)/意思決定とどう関係するか/単なる分散評価で終わっていないか

E|スケール型|Scale-linking / Generalization

"How does micro affect macro?"

小スケールのプロセスが大スケールの挙動にどう影響するか。

問いを成立させるために決めること:どのスケールを接続するか/何が保存され何が失われるか/一般化可能性はあるか

F|動態型|Dynamics / Evolution

"How does X evolve over time?"

時間的変化や相転移を扱う問い。

問いを成立させるために決めること:状態変数は何か/安定性・臨界点はあるか/初期条件依存性は

G|設計型|Design / Intervention

"How should we design a system/process to achieve X?"

構造理解を踏まえて設計に踏み込む問い。

問いを成立させるために決めること:目標状態は何か/設計原理は何か/操作と操作的誘導の境界は

入口と型の関係

仮説先行かデータ先行かという入口(02章)は、どの型を選ぶかを決めません。決めるのは、その型の問いにどう答えるかです。推定型なら、順問題のモデルを置いて逆解析する(仮説先行)か、観測から推定量への写像をデータから学習する(データ先行)か。機構型なら、機構を仮説として置いて検証するか、支配因子をデータから探すか。どちらの入口でも問いは同じですが、「決めること」の中身——とくに識別性と不確実性の扱い——と、必要なデータの形が変わります。例外は妥当性型と不確実型で、いずれもモデルの存在を前提とするため、仮説先行が自然です。

入口を決めるのは、型を選んで「決めること」を埋める段階です。手持ちのデータやモデルから入口を先に決めると、問いがその道具で答えられる範囲に縮みます。

使い方

  1. 自分の問いを1文で書いてみる
  2. 上の型のどれに最も近いか選ぶ
  3. その型の「決めること」が決まっているか確認する
  4. 決まっていない要素があれば、決めてから1文を書き直す

型が決まらない場合は、問いがまだ曖昧です。要素が決まらない場合は、Step 1(分野を調べる)に戻ってください。

分野別の例

理解のための例です。型は上の A〜G で考えてください。

型が決まると決まること

何を書くべきか/どのジャーナルに出すべきか/どのデータが必要か。型を意識するのは流行に乗るためではなく、自分の問いの構造を明確にするためです。

文献の探し方と管理(Step 1 の実務)

何を集めるか:主要なレビュー論文(分野の信念)、直近3〜5年の代表論文5本以上(問いの型と暗黙の前提)、投稿候補の雑誌から似た論文3〜10本(書き方のパターン)

探し方:Consensus(質問文で検索、最初に試す)/Google Scholar(引用数、Geothermal AND "fluid transport" のような演算子)/Web of Science・Scopus(引用関係をたどる)/arXiv(プレプリント)。位置づけの調査では、参考になった論文の References と Cited by を追うのが最も効きます。

Comparison Table に落とす:先行研究/その主張/隠れた前提/限界/自分の更新。

管理:Zotero(無料、ブラウザ拡張、共有に強い)か Mendeley(PDF 整理、Word/LaTeX 連携)。1論文につき「自分の問いにどう関係するか」を1行残す。

投稿先を意識する:雑誌の Scope を理解し、Journal finder で候補を絞る。査読期間などの経験談は Scirev。